回遊の人生楽笑ブログ

クスクス笑って頂ければ幸いです。

多良福シリーズ番外編 bar『ゲイ人』 8(最終話)

豚と多良福と弾漢

 

豚が来てからどれくらい経っただろうか・・・漢と豚は楽しそうに話している。

 

いつのまにか閉店時間になっていた。

 

・・・ん?

 

豚って言ってるって?

 

そうだよ。

 

もう言っていいでしょ?

 

だってこいつ帰らないから。

 

ずっと居座ってるんだよ。

 

ずっと漢と話してるんだよ。

 

ありがたいのだけど・・・ね。

 

僕と漢の時間を奪うなんて・・・そんな奴は豚だ!!

 

「弾。店を閉めといてくれないか?」

 

熱くなっていたところに漢の声が聞こえた。

 

漢に言われ、店を閉める僕。

 

店を閉め終えた後、少し今までと2人の雰囲気が変わっていた。

 

「ちょっと・・・こんなこと聞いていいのか悩んだが・・・あんまり賑わってないみたいだね?経営大丈夫?」

 

「・・・恥ずかしながら・・・。」

 

2人の会話が嫌でも耳に入ってくる。

 

正直赤字だよ。

 

こんなはずじゃなかったんだけどなぁ・・・。

 

「そうか・・・なぁ・・・漢の豚さんよぉ。」

 

「漢は豚じゃないです!!」

 

とっさに僕は反論した。

 

「弾・・・俺は豚さ。お店1つ経営できないただの豚さ。」

 

なんだよ・・・豚じゃないだろ?

 

僕たちはゲイだよ!!

 

「お客さん。経営って難しいものなのですね。」

 

豚に弱音を吐く漢。

 

「そうだな。」

 

「けど・・・閉めたくない。念願の夢であった弾と一緒にお店を開いたんだ!!」

 

漢・・・僕も同じだよ。

 

閉めたりなんかしたくない!!

 

ただ・・・生活が・・・。

 

「うちで働いてみないか?」

 

「・・・はい?」

 

「うちでアルバイトとして働いてみないか?」

 

豚・・・。

 

「多良福っていうお店だ。ちょうど新店舗を出す関係でホールのアルバイトを探しているんだよ。」

 

「豚・・・。」

 

声に出てしまった。

 

「・・・よせよ・・・照れるだろ。」

 

「多良福のオーナーさんでしたか・・・。」

 

「そうなんだよ。まぁ・・・従業員はバカばっかだけどなぁ・・・楽しい職場だ。このお店を続けながら週2,3回でも働いてみないか?」

 

「豚・・・。」

 

声に出して言ってやった。

 

「だからやめろって・・・そんな・・・豚だなんて・・・。」

 

「オーナーさん・・・こんな僕たちが働いてもいいのですか?僕たちは豚じゃない、ただのゲイですよ?」

 

漢が豚に問いかける。

 

「豚もゲイも同じようなもんさ。」

 

「この豚野郎・・・。」

 

どんどん調子にのる僕。

 

「・・・ありがとうございます。」

 

どんどん変態になる豚。

 

「・・・さてさて、ご褒美ももらったことだし・・・帰るとするよ。」

 

・・・ご褒美ってこいつマジで・・・引くわ。

 

「ところでいつから働ける?良ければ・・・来週くらいからどう?」

 

「大丈夫です。ありがとうございます。」

 

漢が丁寧に返事する。

 

「それじゃあ来週からよろしく。ワインご馳走様。」

 

そう言うと豚は帰っていった。

 

こうして僕と漢は多良福でアルバイトすることになった。