『多良福』な人々 4
初めからいましたけど?
「あれ?林山いたの?」
洗濯物語が終わり、ひと段落ついたところでやっと俺に気付く戸田。
「初めからいましたけど?」
いつものことですよ。
「林山さん。いつからいたのですか?」
・・・漢も真似してきやがった。
「初めからいましたけど?」
本日2回目。
「なぁなぁ、その・・・『初めからいましたけど?』ってやめてくれない?ウケる。」
ニヤニヤする戸田。
「なんか・・・軽く持ちネタみたいになってます・・・よね。」
ニヤニヤする漢。
「そうそう・・・ちょっと狙ってるよね?」
「・・・ちょっとじゃないですよ。だいぶ狙ってますよ。」
「『初めからいましたけど?』・・・ウケる。」
「『初めからいましたけど?』・・・ハハッ。」
・・・さっきからこいつらは何言ってる?
ものすごく腹が立つ!!
「だったらどう言えばいいんだよ!?」
「何が?」
「『林山いたの?』って言われた後だよ!!」
「そもそも『いたの?』って普通言われる?」
戸田・・・この野郎。
「存在感アピールしてみてはどうですか?」
「どうやって?」
「そもそも存在感アピールする?普通にいたら気付かれるでしょ?」
・・・戸田ぁ。
この野郎・・・血圧が上がっていくのがわかる。
これが高血圧という状態か。
違うか?・・・まぁどっちでもいいか。
「林山。今度から『初めからいましたけど?』禁止ね。ウケすぎて仕事できなくなる。」
「確かにそうですね。やめてほしいです。あとTシャツも無地のやつにしてください。」
2人とも・・・言いたい放題だな。
・・・
・・・ん?
漢・・・関係ないこと言ってない?
「あぁ・・・そうだね。無地以外禁止ね。というか英語をカタカナで書いてるTシャツ禁止な。」
戸田も・・・俺のオシャレにも口出ししてきやがった。
「別に何を着ようと俺の勝手だろ?」
「ダメだよ・・・そうそう!!漢!!今日のTシャツ見た?」
「いや・・・見てないです。」
「今日はあれだよ?『アイラブビーフ』だぜ?」
確かにそうだが・・・何が悪い?
「クハッ・・・間違いなく狙ってますよね。」
「そうそう。体を張ってまで狙う?」
「そこまでしないですよ。」
「アハハ・・・ウケるわぁ。」
この後も戸田と漢は俺を無視し、俺の話を続ける。
うん・・・戸田は減給だ。
漢は・・・ホールの人に頼んで減給にしてもらおう。
・・・ん?
待てよ・・・
あいつに頼むか。
・・・そのためにこいつらの決定的瞬間を・・・俺が作ってやる!!