甲斐くんと林山。その他多数 8
いや・・・だから、助けるか助けないかの話だから・・・。
「森林さん。何があったか知らないですけど暴力はダメです!!」
「林山ですけど!?お前もブレねぇな!!」
漢の後ろでクスクス笑う戸田。
「森林だって・・・フフフ。」
この状況で笑っている戸田が余計に腹立つ。
「お前いいからちょっとどいてろ。俺は戸田に話がある。」
冷静に漢をどかそうとする俺。
もう少しだ・・・もう少しで・・・ビンタだ。
「いや、どきません。僕にも何があったのか教えてくれませんか?」
・・・クソっ・・・もう少しなのに・・・。
「俺が説明するよ。漢、実はな・・・」
野次馬でやってきた甲斐くんが漢に今までのいきさつを説明する。
「なるほど・・・林乃山さん。」
「林山ですけど?林乃山って・・・力士かっ!!」
「こんな言葉を知っていますか?」
「・・・何だよ。」
ちょっと格好つけている漢に腹が立ってきた。
「デティールに神は宿る!!」
・・・
・・・
・・・はぁ?
「・・・どや顔のとこ悪いんだけどさぁ・・・漢、デティールって何?」
甲斐くんがこの場に漂う何とも言えない空気を切り裂いた。
「デティールとは・・・詳細、細かいことです。戸田さんはそれを明確にしようとしたのでしょ?素晴らしいことではないですか!!」
・・・
・・・
・・・はぁ?
「デティールを要求することは間違ったことじゃないですよ。だってそこには神がいるのですから。」
・・・
・・・
・・・こいつさっきから何言ってるの?
「戸田さん。あなたは素晴らしい人です。これからもどんどんデティールを追及してください。」
「いまいちわからないけど・・・助かったよ漢!!ありがとう!!」
そう言うと戸田は漢と握手し、呆然と立ち尽くす俺を横目に厨房に帰っていった。
なんか・・・腑に落ちないのは俺だけ?
呆然と立ち尽くす俺の肩に手をあて、甲斐くんが話しかけてきた。
「林山・・・漢ってバカなんだな。」
そう言うと甲斐くんも厨房に戻った。
怒りもおさまった。
だけど1つだけ・・・
これは・・・助けるか、助けないかの話なのだよ・・・。