回遊の人生楽笑ブログ

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多良福シリーズ番外編 bar『ゲイ人』 7

口から出た災いのもと

 

こんばんは。

 

僕は弾。

 

みんなもう知ってるよね?

 

そうです。

 

漢の相方です。

 

今日も営業が始まるんだけど・・・お客さん来るかな?

 

3日連続でお客さん来てないんだよね。

 

何がいけないんだろう・・・漢がいるのに。

 

そういえば・・・最近漢もおかしいんだよね。

 

なんか・・・小さい声で『豚は・・・豚だ』って。

 

漢のこと否定するわけではないが・・・豚にハマりすぎだよ。

 

「まだ営業してる?」

 

お客さんだ!!

 

久しぶりだ!!

 

「豚だ・・・いらっしゃいませ。」

 

・・・はっ!?

 

ちょっ・・・漢!?

 

「・・・豚?」

 

・・・そりゃあそういうリアクションになるよねぇ・・・。

 

さすがにまずいよ・・・漢・・・。

 

「いや、そのぉ・・・。」

 

しどろもどろになる漢・・・可愛い。

 

「・・・ありがとう。」

 

えっ!!

 

まさかのリアクション!!

 

「まさかのリアクション!!」

 

声に出てしまった。

 

・・・このお客さん・・・そういう人なんだ。

 

・・・ドン引き。

 

・・・よく見たらこの前来てた中年のおじさんだ。

 

「この前はありがとう。おかげで経営も良くなってきたんだ。感謝してるよ。」

 

「・・・僕何かしましたか?」

 

漢が尋ねる。

 

「この前君が教えてくれたどこかの経営者の話だよ。あれがヒントになってねぇ・・・経営がうまくいきだした気がするよ。」

 

「そういえば・・・そんなことありましたね。」

 

僕も思い出した。

 

『お客さんにいかに来てもらうかでなく、いかに帰ってもらうか』ってやつだね。

 

「おかげで2店舗目を出すことも決まったよ。」

 

「それはそれは・・・おめでとうございます。」

 

そう言うと漢はこの店で1番高いワインを差し出した。

 

「このワイン・・・注文してないんだが・・・。」

 

「お祝いです。」

 

「・・・すまないね。それじゃ遠慮なく頂こうかな。」

 

そう言うと中年のおじさんはグラス3つを注文し、それぞれにワインを注いだ。

 

「みんなで乾杯してくれないか?」

 

「はい。喜んで。」

 

おじさんからワインの入ったグラスをもらう僕と漢。

 

「お客さま、乾杯の音頭をお願いします。」

 

「わかった。」

 

口に手をあて、咳をついたおじさんが乾杯の音頭をとった。

 

「2店舗目出店が決まったこと・・・それと・・・」

 

・・・それと?

 

「豚に乾杯だ。」

 

・・・マジか。

 

2度目のドン引き。

 

「豚に乾杯ですか?」

 

漢が思わず質問する。

 

「あぁ・・・豚にだ。いい言葉じゃないか。」

 

・・・あまり関わらない方がいい人間だな。

 

まぁ・・・今後もし・・・また来店した時には・・・こいつのことは『豚』と言ってあげようと心に決めた。