回遊の人生楽笑ブログ

クスクス笑って頂ければ幸いです。

多良福シリーズ番外編 bar『ゲイ人』2

ティール!!

 

「いらっしゃいませ。」

 

Bar『ゲイ人』、今日もお客さんがやってきた。

 

僕は弾、主に漢のサポートを行っている。

 

漢のそばにいれるだけで幸せだ。

 

「マスター、とりあえず生をくれ。」

 

生とは生ビールのこと。

 

「かしこまりました。」

 

「あとつまみとかある?」

 

「すぐ出せるのは・・・ナッツ類でしたら・・・。」

 

「・・・うーん。なんか温かい料理が食べたいな。作ってもらえる?」

 

「かしこまりました。どういったものがよろしいでしょうか?」

 

「なんでもいいよ。適当に作ってよ。」

 

注文が大雑把すぎて何を提供すればいいのかわからない。

 

こういうお客さんに限って提供したものをほとんど食べずに残して帰ってしまうんだ。

 

せっかく漢が作ったのに・・・。

 

「失礼ですがお客様・・・こういう言葉を知っていますか?」

 

漢のこのセリフ・・・何か名言の予感がする。

 

「・・・ん?なんだい?」

 

「デティールに神は宿る!!」

 

・・・デティールって・・・何?

 

「はぁ?・・・デティールって何?」

 

お客さんも同じこと思ってたようだ。

 

「デティールとは・・・詳細です。細かい説明です。」

 

「・・・今関係ある?」

 

「注文にもデティールが必要だと・・・私は思うのです。」

 

何を作ればいいか迷ったんだね。

 

お客さんのリクエストが聞きたかったんだね。

 

それをデティールなんて言葉使うとは・・・素敵だ。

 

「本当になんでもいいんだよ。温かいものなら文句言わずに食べるからさぁ・・・。」

 

「ですから・・・注文にもデティールを・・・。」

 

この言い合いが何回か続いた後、お客さんは怒って帰ってしまった。

 

「弾・・・俺が悪いのか?デティールにこだわった俺が悪いのか?」

 

「漢は悪くない。何を作っていいのか迷ったんだよね。」

 

「・・・そうだ。あんな頼み方されたら・・・困ってしまうだろ?」

 

グラスを拭きながら答える漢・・・少し落ち込んでる気がする。

 

漢・・・気にすることはない。

 

漢の思うようにすればいい。

 

ちなみに困って少し落ち込んだ漢・・・いつも以上に素敵だ。

 

そんなことを考えていると閉店時間がやってきた。

 

今日も1日が終わる。