多良福シリーズ番外編 bar『ゲイ人』 1
漢と弾
僕は弾(だん)、相方の漢(かん)とbarを経営している。
店の名前は『ゲイ人』。
2人でお店を出すことが夢だったから・・・これも全部漢のおかげさ。
ちょっと喧嘩し、別れ話などもした。
距離を置いたこともあったのだが・・・昔のこと。
今はお店を出し、ずっと2人でいれる・・・幸せだ。
そんなことを考えていると、漢の素晴らしい接客を求めて今日もお客さんがやってきた。
「まだ営業してる?」
「大丈夫ですよ。いらっしゃいませ。」
今日のお客さんは中年のおじさん。
「何を飲まれますか?」
「適当にカクテルを作ってくれ。」
「かしこまりました。」
漢が作るカクテル・・・僕も飲みたい。
カクテルを作る漢・・・素敵だ。
「マスター・・・ちょっと話聞いてくれるか?」
「私でよければ聞きますよ。」
「実はな・・・どうも最近仕事がうまくいかないんだ・・・今まで通りやってるつもりなんだけどなぁ・・・。」
「ちなみにお仕事は何されてるのですか?」
「飲食店のオーナーをしている。」
「なるほど・・・。」
「時代ってやつかね。思うように利益があがらねぇや。」
作ったカクテルをお客さんの前に置き、漢は話を続ける。
漢の作ったカクテル・・・僕も飲みたい。
「突然ですが・・・お客さんはこんな言葉を知ってますか?」
「なんだい?」
「お客さんにいかに来てもらうかでなく、いかに帰ってもらうか。」
・・・決め顔の漢も素敵だ。
「・・・ほう。」
「どこかの飲食店のオーナーが言っていた言葉だそうです。」
「なるほど・・・。」
考え込んだ感じの中年のおじさん。
「・・・なんとなくわかった気もするが・・・。」
「ちょっとお客さん!!漢がこんなに素晴らしいこと言っているのに、なんとなくって・・・失礼だろ!!」
つい言葉を発してしまった。
「やめろ弾!!」
・・・漢に怒られた。
「失礼だったのなら謝る。失礼したよ。」
謝る中年のおじさん。
「いえいえお客さん・・・こちらこそ失礼しました。」
謝る漢。
「・・・ちなみにゲイ人ってどういう意味だい?」
僕と漢は声を合わせて言った。
「ゲイ人とは男性を愛する男です。」
「なるほど・・・それで店の名前が『ゲイ人』なのか。」
「そうです。僕たちは誇りを持っています。」
あぁ・・・漢・・・素敵だ。
「そうか・・・お2人さんお幸せにな。」
そう言って勘定をすませ、中年のおじさんは去っていった。
「今日はこれで閉店だな。」
閉店作業を行う漢と僕。
今日も1日が終わった。
Bar『ゲイ人』、よければみなさんも来てみてください。