甲斐くんと林山、たまに戸田。運命交錯編 6
チン
「弁当の話いいの?大事なところだろ?」
「大事じゃねぇよ。」
「なんだよ・・・つまらない男だなぁ。」
しょうもない会話のキャッチボールをする俺と戸田。
「いいから『どうかしましたか?』から続き話せよ。」
「そうそう・・・『どうかしましたか?』って聞いたら『こんなこと聞くのもあれなんですが・・・男に興味はありますか?』って。」
直球勝負!!
「これ聞かれた時にチンって。」
「・・・チン?」
「温めが終わった音さ。」
イライラするわぁ・・・。
「1か月前から口説かれてたの?」
甲斐くんが話を戻す。
「そういうことに・・・なるかな。」
「お前さぁ、男に興味ある?って聞かれて何て答えたの?」
俺は戸田の本心を聞きたかった。
「興味ないって言ったよ。」
「普通だった。」
「ただ、恋人の愚痴とかいろいろ話してくるからさぁ、聞いてたんだ。そしたらしょっちゅう来るようになってさぁ・・・それで今日本格的に誘われたってこと。」
なるほどね。
「まさか・・・戸田も誘われてたなんてなぁ・・・。」
「そうだよ・・・俺も甲斐くんがナンパされてたとは思わなかったぜ。」
・・・
・・・
2人揃って声を発した。
「林山はないの?」
「ねぇよ。」
・・・
・・・
「何か・・・俺たちだけ悪いなぁ・・・なぁ戸田?」
「そうだよなぁ・・・。」
こいつら何考えてるの?
俺は本心をはっきり2人に伝えた。
「俺的には男にナンパされることなどないほうがありがたいけどね。」
「いやいや・・・男だったとはいえ俺たち2人は誘われた。林山は誘われてない。」
・・・
・・・。
「甲斐くん。何が言いたいの?」
「男だったとはいえ俺たち2人は興味を持たれた。林山は誰からも興味を持たれない。」
・・・
・・・。
「戸田。何が言いたいの?」
2人でニヤニヤしている。
俺の前でおっさん2人がニヤニヤしている。
「これって・・・なぁ戸田?」
「おいおい・・・あんまり言うなよ。かわいそうだろ?」
「だけど・・・事実だし。」
ニヤニヤからクスクス笑うようになった2人。
「お前って本当に男、女どちらからも興味を持たれないんだな。」
・・・ひどくないかい?
言いすぎだろ?
今なら謝れば許してやるけどどうする?
「きっと街歩いてても、仕事してても存在感無いんだよ。」
戸田ぁ・・・気にしているのに・・・。
「かわいそうだな・・・林山。」
2人同時に発せられた言葉が俺の胸に突き刺さった。
俺だって街中で声かけられたさ・・・その服カッコいいって。
でもバカにされるから言わなかった。