甲斐くんと林山、たまに戸田。誕生編 2
キラキラ
「なぁ林山、俺結婚したい。結婚したら子ども2人がいいなぁ、女の子と男の子。そう思うだろ?」
未来予想図を恋人でなく、俺に語り始めたこの男、ご存知甲斐くん。
ハゲが気になり始め、帽子をしょっちゅう被っている男。
「俺に言うなよ。気持ち悪ぃだろ?」
「だってお前しか言える相手いないんだもん。」
かぁ・・・寂しい。
しかも『だって・・・だもん』って。
「俺さぁ、お前しかいないんだよ。お前じゃなきゃダメなんだ。」
「それはよかった。でも今後一切この感じ無しな。」
「そういう冷めた対応・・・嫌いじゃないよ。まぁお前だって結婚したいだろ?子どもの名前とかどうするの?」
閉店作業をしながら話を進める甲斐くん。
「普通の名前でいいかな。今変な名前多いだろ?後先考えないで決めるやつ。」
「キラキラネームってやつね。俺もそれには賛成だな。」
続けて話す甲斐くん。
「俺美しいに大樹の樹って漢字使って名前つけてあげたい。」
「なになに・・・『みき』ちゃんかぁ。いい名前だな。お前にしては上出来だよ。」
「違うよ。『み〇きー』君だよ。」
「キラキラ!!それがキラキラネームでしょうが!!」
「みんなに夢や感動を与えることができる人になってほしいんだ。」
「理由はちゃんとしてるけど結局キラキラだよ。ダメとは言わないが。」
「じゃあ・・・『尼茂(に〇)』は?」
「キラキラだし意味わからん!!何?結局キラキラにしたいの?俺の意見賛成とか言いながら。」
「じゃあ何て名前がいいんだよぉ・・・私たちの・・・」
「死ね!」
30代半ばでこんな低俗な言葉を発するとは思いもしなかった。
閉店作業が終わり、二人揃って暗い夜道を帰った。
「ねぇねぇ、『絵留桜(え〇ざ)』は?」
帰り道もずっとキラキラネームを発する甲斐くん。
帽子を被り忘れた甲斐くんの頭も街灯にあたりキラキラしていた。