回遊の人生楽笑ブログ

クスクス笑って頂ければ幸いです。

甲斐くんと林山、たまに戸田。誕生編 1

ジメジメ

 

 

 

「8月・・・だな。」

 

「そうだな。」

 

「梅雨終わったな。」

 

「確かに。夏だよ、甲斐くん。」

 

俺は林山(はやしやま)。

 

今日も小料理屋『多良福(たらふく)』で働く35歳。

 

「なぁ林山、俺の人生の梅雨明けはいつになるのかなぁ?ここ10年くらい梅雨なんだけど。」

 

ポエムチックな発言をしている男は甲斐くん。

 

10年以上付き合いのある俺の友人。

 

「まだ先かな。だって俺たちフリーターじゃん?やっぱ社員になったら梅雨明けるんじゃね?」

 

「だったら俺・・・梅雨のまんまでいい!」

 

甲斐くんは記念すべき人生30周年を満喫している梅雨男。

 

なんか憎めない、そんなやつ。

 

「おいおい、そんなこと言うなよ。俺たちもサンサンの太陽を浴びて夏男になるんだよ。お日様好きだろ?」

 

「・・・なんか発言ダサい。注意したほうがいいよ、林山。夏男って・・・。」

 

「じゃあお前は海辺の水着ギャルとビーチバレーしたくないのか?なちゅじゃないとできないぞ。」

 

「熱くなりすぎて噛んでるし。言うことダサいわ、噛むわ・・・お前最高だな。」

 

テンションが上がる甲斐くん。

 

「よっ!!なちゅ男!!」

 

「うるせぇよ。あぁ・・・もういい!!仕事取りかかるぞ。今日の仕込み何があるんだよ。」

 

ようやく仕事。

 

「今日は・・・なちゅ野菜の揚げびちゃし。小松菜のおひちゃし、なちゅの酢みちょ和え・・・。」

 

「なんだよそれ!気持ち悪ぃ!!全部ジメジメしとる!!」

 

「きゃら揚げ、あと・・・。」

 

「ちょっと待って、何で全部甘噛み?はっきり言えよ!もう梅雨明けたんだぜ?世の中は梅雨明けたんだぜ?」

 

「・・・今日のツッコミ・・・キレあるな。勢いある。何かいいことあった?」

 

「んなことねぇし!そんなん言われたら恥ずかしいわ!」

 

「そうかそうか。・・・あと今日の仕込みというか作る料理は・・・オクラと納豆の和え物。」

 

「・・・んんっあぁ!!なんか全てねちょねちょ!!やっぱお前梅雨男だわ。」

 

「・・・やっぱりいつもと違う。ひょっとしてだけど・・・今日信号ひっかからずに通勤できた?」

 

「あいにく全部ひっかかったわ!!いいことなんてねぇよ!」

 

「逆にちゅいてるよね。」

 

「わざと噛むなぁ!!」

 

こんなくだらないやりとりが10年以上続いている。

 

こんなんだから梅雨明けしないんだよ。俺らの人生・・・。