甲斐くんと林山、たまに戸田。誕生編 4
戸田登場
「うぃーす。」
「戸田!!うぃーす。」
突然現れたこの男、戸田。
ただのバカ。
忙しい仕込みがある時だけ働きにくるアルバイトの31歳。
「今日は朝働いてきたの?」
「まぁな。バーコード達と軽く会話してきた。」
コンビニのレジ打ちね。
かっこよく言ったつもりかねぇ?
「お前はやっぱかっこいいなぁ!!」
「甲斐くん。戸田を調子に乗せんなよ。何がかっこいいんだよ。ただのコンビニのレジ打ちだろ?いいから早くコロッケ仕上げるぞ。」
コロッケの形を整え、冷凍保存していく作業を始める3人。
初めはよかった。
ただ、バカ2人が集まると・・・。
「なぁなぁ、戸田。なんでお前かけもちで働いてるの?コンビニの仕事楽しいの?」
「楽しくなんかねぇよ。ただ俺は自分のしたいことが見つからねぇんだ。やりたいことやるのが人生の楽しみだろ?」
「じゃあ戸田は自分のやりたいこと見つけるまでかけもちで働くんだね。」
「そうだな。たとえ、何年かかっても自分のやりたいこと見つけるさ。」
「今までやりたいこと探しって例えば何をしたの?」
「そうだなぁ・・・ゲームして、テレビ見て、ネット見て・・・。」
要はほとんど何もしてねぇんだな。
「プロゲーマーになりたかったの?」
「そういうわけじゃない。ただ1回経験しとこうかなと。」
・・・うるせぇよ。
「戸田は人生経験豊富だ!!」
・・・そうでもねぇよ。
とりあえず戸田・・・家に引きこもらず外に出ろ。
「甲斐くん。俺はいつか世界を動かす!!」
・・・。
「戸田ならできるよ。応援してる!!」
早く終わらねぇかな、この会話。
「戸田はどうやって世界を動かすの?」
まだ続くの?
「俺がやりたいこと見つけたら簡単に世界なんて動くさ。」
「じゃあ戸田はどうやってやりたいこと見つけるの?」
「それは・・・色々試しにやってみて、これだ!!と思うやつを見つけるんだよ。」
「今まで試しにやったことって・・・ゲーム、テレビ見る、ネット見る・・・この3つだよね?」
「バカっ!!コンビニと居酒屋も経験してるから5つだよ。」
テレビ見る、ネット見るは同じではないのか?何が違うのか?
「この先やりたいこと見つけられたとしよう。もちろん今まで経験したことないものだから、知識も経験もゼロでしょ?」
「そうだな。」
「30代で見つかったとしても年の離れた若い人が先輩になる。」
「・・・まぁな。」
「間違いなくバカにされるよね?」
「・・・そんなことないだろ?」
・・・長ぇ。
飽きてきた。
「だったら40,50代で見つかったとしたらどうよ・・・未経験のじじぃだよ?『何しに来たの?』って話じゃない?」
「優しく教えてくれる人だっているだろ?」
「確かにいるけど・・・間違いなく陰口は叩かれてるよね。」
甲斐くん・・・性格悪くね?
「60代で・・・」
「待て!!それ以上言うな!!」
「・・・なぁ・・・戸田。大人になってよ。夢なんて持たずにさぁ、一緒にフリーター人生楽しもうよ。やりたいことじゃなくてもそこそこ楽しくなるぜ。」
「・・・こんな俺でも人生楽しめるのか?」
「そこそこな。」
「・・・終わった?長ぇよ。あと何回同じことすれば気がすむのかなぁ?」
実はこの会話、2人が会うたびにやってる。
かれこれもう5回目くらいかな。
「なぁなぁ林山、俺の子どもっぽい感じ伝わった?」
「いや全く。」
皆さんは気付きました?
気付くわけがねぇだろ!!
「俺は気付いた!!ビックリしたよ。『アドリブ入れてきた!!』って思ったもん。」
「やっぱ戸田は分かってくれるなぁ。」
やはりバカの考えることは分からない。
そんなこんなで長いコロッケ仕込みの日は終わった。